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一人暮らしの世帯主は誰になる?定義や判断基準を解説

引っ越しや一人暮らしを始めると、マイナンバーカードの申請や健康保険の手続き、電気・ガス・水道の契約など、いろいろな場面で「世帯主」の名前を書く欄に出会います。そんなとき、「あれ?これって自分の名前を書くの? それとも親?」と戸惑ったことがある人も多いのではないでしょうか。
実はこの「世帯主」、ただの書類上の肩書きではなく、選挙権や手当、保険料といった生活に直結することにも関係しています。世帯主になるかどうかによって、自分や家族の状況も変わるかもしれません。
このコラムでは、一人暮らしを始めるにあたって知っておきたい「世帯主」の仕組みや、住民票・手続きにまつわるポイントをわかりやすくご紹介。新生活をスムーズにスタートさせるためのヒントをお届けします。
目次
世帯主とは
「世帯」とは法律上、法律上「住居および生計を共にする者の集まり」または「独立して住居を維持する単身者」と定義されています。つまり、家族と同居している場合だけでなく、一人暮らしをしている場合でも、その住まいは「一つの世帯」として扱われます。
ただし、誰が「世帯主」となるかは、住民票にどう記載されているかによって判断されます。次に、世帯主とみなされる具体的な条件について見ていきましょう。
世帯主の判断基準は住民票がどこにあるか
世帯主かどうかは、単に一人暮らしをしているかどうかではなく、「住民票がどこにあるか」で判断されます。たとえば、実家を離れて一人暮らしを始めたとしても、住民票を移していなければ、世帯は実家にあるとみなされ、親が世帯主のままです。
一方、住民票を一人暮らし先の住所に移せば、その場所が一つの世帯として扱われ、自分自身が世帯主になります。これは、収入の有無や学生・社会人といった立場は関係ありません。
たとえ仕送りで生活している大学生でも、住民票を移せば本人が世帯主となります。まずは自分の住民票がどこにあるのかを確認してみましょう。
一人暮らしで住民票を移す必要はある?
引っ越した場合、住民票を新しい住所に移すことは、住民基本台帳法という法律で義務づけられています。引っ越し後14日以内に届け出をしないと、5万円以下の過料が科される場合もあるので注意が必要です。
ただし、1年以内に実家へ戻る予定がある、生活の拠点が変わらないといった一時的な転居であれば、移さなくてもよいケースもあります。
住民票を移しておかないと、以下のような場面で「世帯主」の記載や証明が必要になった際に支障が出ることがあります。
- 運転免許証の住所変更や更新
- マイナンバーカードの発行・更新
- 郵便物の本人確認配達
- 会社からの住宅手当・通勤手当の申請
- 公共料金の契約手続き
住民票を移す手続きとは
住民票の手続きは、マイナンバーカードの有無によって方法が異なります。
カードを持っている方は、引っ越し前にマイナポータルか郵送で「転出届」を提出すれば、紙の転出証明書は不要。引っ越し先の役所で転入届を出すだけで完了します。
一方、マイナンバーカードを持っていない場合は、旧住所の市区町村で転出届を出し、「転出証明書」を受け取ってから、新住所の役所で転入届を提出します。
いずれの場合も、引っ越し後はなるべく早めに手続きを済ませることが大切です。
一人暮らしで世帯主になるメリット
勤務先によっては世帯主手当がもらえることも
世帯主になると、会社によっては「世帯主手当」や「住宅手当」などの支給を受けられる場合があります。これは会社ごとに就業規則で定められており、支給条件として「本人が世帯主であること」が明記されているケースも少なくありません。
なかには「住民票を現在の住所に移していること」が条件になっていることもあり、実家に住民票を残したままだと対象外になることも。せっかく手当の対象になっていても、条件を満たしていなければもらえないので注意が必要です。
手当が支給されると、毎月の家計にゆとりが生まれ、生活費の負担を軽減できる点は大きなメリットといえるでしょう。一人暮らしを始めると何かと出費が増えるので、こうした手当があると安心感が違います。
まずは、自分の会社にどんな手当があるのか、世帯主として受け取れる制度があるかどうかを調べてみるのがおすすめです。手続きのタイミングも大切なので、引っ越し前後に確認しておくとスムーズです。
住んでいる市町村で選挙の投票ができる
住民票を移し、世帯主になると、新しく住み始めた地域で選挙に参加できるようになります。選挙権は「住民票がある市区町村」に基づいて与えられるため、住民票を移していないと、実際には暮らしていない地域で投票することになってしまいます。
たとえば、「引っ越し先の街をもっと良くしたい」「地元の行政に関心がある」と思っても、その地域に住民票がなければ投票できません。
ただし、新しい住所地で投票できるのは、住民票を移してから3か月が経過していることが条件です。具体的には、「選挙人名簿の登録基準日において3か月経過している必要」があります。3か月以内に選挙がある場合は、以前に住んでいた地域での投票となります。選挙の日に引っ越し前の住所地に行けない場合は、不在者投票もできます。
引っ越し後も選挙に参加したい人は、住民票の手続きを早めに済ませておくのがおすすめです。選挙に関心がある人ほど、世帯主としての手続きが大切になってきます。
一人暮らしで世帯主になるデメリット

家族手当が支給されなくなる
一人暮らしをして住民票を移し、自分が世帯主になると、実家の家族が受け取っていた「家族手当」が打ち切られる可能性があります。たとえば、親が勤務先から扶養家族としての手当を受けていた場合、世帯を分けることで扶養の対象外と判断されることがあるのです。
家族手当は、扶養している家族がいる人を対象に支給されるもので、配偶者や子どもだけでなく、一定の条件を満たす親族にも適用されることがあります。支給条件に「同一世帯であること」が含まれている企業も多いようです。学生のうちに一人暮らしを始めた場合でも、住民票を移すと制度上は親と別世帯とみなされ、手当の支給条件から外れてしまうことになります。
自分の手取りが減るわけではありませんが、親の家計には影響が出るため、結果的に仕送り額などが変わる可能性も。一人暮らしを始める際には、手当の有無や条件を家族と一緒に確認しておくと、後々のトラブルを避けることができるでしょう。
国民健康保険料が高くなる場合も
一人暮らしを始めて世帯を分けると、健康保険の手続きにも影響が出てきます。会社の健康保険に加入していない学生やフリーターの場合は、自分で国民健康保険に加入する必要があり、実家で家族と一緒に入っていたときよりも保険料の負担が大きくなることがあります。
国民健康保険料は「世帯単位」で計算されるため、一人分でも1世帯として扱われ、結果として負担が増えるケースがあるのです。
この「世帯単位」の考え方は、医療費の負担に関わる高額療養費制度にも影響します。自己負担の上限額も世帯単位で決まるため、同じ医療費であっても、実家で家族と同じ世帯に入っていたときよりも、一人世帯のほうが負担が大きくなるケースがあります。
一人暮らしで「世帯主」となった場合には、保険料が思ったより高くなることもあるため、保険料の減免や高額療養費制度など、自分が利用できる制度について、住んでいる自治体で確認しておくことが大切です。
まとめ
一人暮らしを始めると、各種書類で「世帯主」の記載が必要になる場面が出てきます。世帯主は住民票の世帯構成で決まり、住民票を実際に住んでいる住所に移せば、自分自身が世帯主となります。
勤務先によっては住宅手当がもらえたり、新しく住み始めた地域で選挙に参加できたりと、世帯主になることで得られるメリットもあります。一方で、実家の扶養から外れることで家族が受けていた家族手当が打ち切られたり、保険料が高くなったりすることもあるので注意が必要です。
学生や若い社会人にとっては見落としがちな点ですが、世帯主の扱いは暮らしに関わる大切な要素です。
不安なく新生活を始めるために、世帯主の仕組みや手続きをしっかり確認し、必要に応じて家族や自治体にも相談しながら、自分に合った方法を選びましょう。