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西日本でよく見られる敷引きとはどんな仕組み?わかりやすく解説します

賃貸物件を探しているときに、「敷引き」という言葉を目にして戸惑ったことはありませんか?
「『敷金』なら知っているけど、『敷引き』って何だろう?」「『敷引き』の場合、退去のときに敷金はどのくらい戻ってくるの?」と、不安を感じる方も少なくありません。
「敷引き」は、西日本の賃貸契約で見られる仕組みですが、全国的にはあまり一般的ではないため理解が曖昧なまま契約してしまい、後からトラブルになるケースもあります。
本コラムでは、「敷引き」の基本的な仕組みや敷金との違い、金額の目安をわかりやすく解説。退去時に後悔しないために、知っておきたいポイントを整理していきます。
目次
「敷引き」とは
賃貸契約でよく耳にする「敷金」や「礼金」と比べ、「敷引き」はあまり聞き慣れない言葉です。
特に関東圏など東日本で物件探しをしたことのある方にとっては馴染みが薄く、「退去時にお金が戻らないって本当?」「どういう仕組みなの?」と疑問を抱く人も少なくありません。
実際、「敷引き」として表記されている金額は退去時の返金額に直結するため、内容をきちんと理解していないと「思ったよりお金が戻ってこなかった......」と後悔してしまうケースもあります。
ここでは、「敷引き」の基本的な意味や特徴を整理しながら、他の初期費用との違いや地域性までわかりやすく解説します。
敷金や礼金との違い
まず、「敷引き」を理解するうえで重要なのが「敷金」や「礼金」との関係です。
「敷金」は入居時に「(一時的に)預ける」お金で、いわば保証金です。この場合、退去時にクリーニング費用や修繕費を差し引いた残額が返還されるのが一般的です。
一方、「礼金」はその名の通り「住まいを貸してくれた家主に感謝の気持ち=お礼として渡すお金」であり、基本的に返還はされません。
これに対し「敷引き」は「『敷金の一部を返還しない』とあらかじめ取り決める仕組み」です。
例えば、入居時に10万円の敷金を預け、「敷引き5万円」と契約に定められていれば、退去時に最低でも5万円は戻らない計算となります。
「敷引き」の計算方法
「敷引き」の計算は契約内容によって異なりますが、一般的には「敷金のうち〇割/〇万円を『敷引き』とする」といった形で明記されています。
例えば、「敷金15万円・敷引き5万円」と記載されていれば、退去時に修繕や原状回復にかかった費用を差し引いた後、たとえそれが5万円という金額より少なかった場合でも、必ず5万円は返還されません。また「敷金20万円・敷引き30%」と定められている場合は、退去時に必ず6万円が差し引かれる計算です。
こうした取り決めは契約書に明示されているため、入居前に必ず確認しておくことが大切です。
特に「敷引き額が高い物件は、実質的に礼金込みと同じ」という見方もできるため、総額でどのくらいの初期費用がかかるのかシミュレーションしておくと安心です。
「敷引き」が多い地域とは
実は「敷引き」は全国共通の仕組みではありません。
西日本、とりわけ関西圏や九州エリアで古くから存在する慣習です。一方、首都圏や東日本では敷引き制度はあまり一般的ではなく、「敷金・礼金」の組み合わせで契約条件が設定されるのが一般的です。
そのため、例えば関東出身の方が西日本で物件を探すと「敷引き」という条件に戸惑うこともあります。ただ、近年は関西圏を中心に減少しているのが現状です。
「敷引き」の相場
「敷引き」の金額は物件や地域によって幅がありますが、西日本では家賃1.5~2か月分前後に設定されるケースが多く見られます。
例えば、家賃6万円の物件なら「敷金12万円・敷引き9万円」といった条件が一般的です。
「敷引き」は必ず退去時に差し引かれる費用であるため、初期費用としてかかる金額と退去時に返金される金額の具体的な数字をイメージして、契約前にしっかり確認しておくことが重要です。
「敷引き」の法的拘束力について

「敷引き」は「借主にとって一方的に不利な条項ではないか?」と不安に思う方もいるかもしれません。
しかし結論から言えば、「敷引き」は契約書に明記されている限り、法的拘束力を持つ有効な取り決めであるとされています。実際、2011年には最高裁判所で有効の判決が出ています。
つまり、契約書に記載されている以上、退去時に敷金から「敷引き」として一定の金額を差し引かれることは正当な請求とされ、拒否することはできません。反対に、契約書に明記がないのに「敷引き」が行われることは違法です。
住まいを借りる側として何よりも重要なことは、「契約前に条項を確認し、納得した上でサイン・捺印すること」です。法律的に有効であるからこそ、事前の理解とチェックが安心につながるのです。
「敷引き」のない物件を探す方法
「敷引き」は西日本を中心に今も残る慣習ですが、初めて聞いた方にとっては仕組みが分かりづらく、将来的なお金の流れを掴みづらい面があります。
退去時の返金トラブルを避けたい、あるいはできるだけ初期費用をシンプルにしたいと考える方にとっては「『敷引き』のない物件」を選ぶのも一つの方法です。
ここでは、その探し方のポイントをご紹介します。
「敷金・礼金ゼロ」物件を探す
もっともわかりやすい方法が、「敷金・礼金ゼロ」の物件を探すことです。
近年は入居者の初期費用負担を抑えるため、こうしたいわゆる「ゼロゼロ物件」が増えています。最初から敷金を預けないため、当然ながら「敷引き」の心配もありません。
「ゼロゼロ物件」は、特に学生や新社会人向けの物件に多く、引っ越しシーズンには募集も活発です。
ただし、「敷金・礼金ゼロ」の物件は初期費用による担保がない分、退去時にクリーニング費用を一括で請求される場合があるため、初期費用だけでなく退去時の条件も確認しておくことが大切です。
敷金・礼金ゼロ物件を探すならこちらから → 敷金礼金0(ゼロ・なし)賃貸特集
契約時にしっかりと確認する
契約書に「敷引き○万円」や「敷金のうち○割を『敷引き』とする」などの記載がなければ、「敷引き」は発生しません。
契約前に営業担当者へ「この物件は『敷引き』があるのか」「退去時に返金される金額はどのくらいか」と尋ねたり、具体的に契約書の内容をしっかり確認することで、後からのトラブルを防げます。
まとめ
「敷引き」は関西圏や九州など、西日本を中心に今も残る地域特有の慣習で、契約書に明記されていれば法的に有効となるため、よく理解せず契約を結ぶと、退去後に「思っていたより敷金の返金が少なかった」というトラブルにつながるケースもあります。
そのため、できるだけ初期費用や退去費用をわかりやすくしたい方にとっては、「敷引き」のない物件を選ぶことが安心につながります。
探し方のポイントは大きく分けて2つあります。
- 最初から「敷金・礼金ゼロ」の物件を検討する
- 契約前に「敷引き」の有無を必ず確認する
敷金・礼金のない「ゼロゼロ物件」は初期費用が抑えられる一方で、退去時のクリーニング費用などが別途請求される可能性もあるため、条件を総合的に把握して選ぶことが大切です。
また、仮に敷金がある物件でも、契約書に「敷引き」の記載がなければ発生しません。契約時には、細かな条文までしっかり確認し、もし疑問がある場合は担当者に質問しましょう。
「敷引き」の仕組みを理解し、費用を事前に見通せる物件を選ぶことが、新生活を安心して始めるための第一歩となります。