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賃貸の前家賃とは?いくらかかるのか実際にシミュレーションしてみよう

マンションやアパートなどの賃貸物件を借りる際、月々の家賃とは別に「初期費用」が発生します。その中に含まれる項目のひとつが「前家賃」です。
「前家賃って何?」「どうして支払う必要があるの?」と思われる方もいるかもしれません。
本コラムでは、「前家賃」の基本的な仕組みや支払いの時期、金額について、分かりやすく解説します。
契約時に想定外の出費で慌てないためにも、前もって正しく理解しておきましょう。
目次
前家賃とは
「前家賃」とは、言葉の通り「前もって支払う家賃」のこと。一般的には、翌月分の家賃を前月に納める仕組みのことを指します。日本の賃貸契約では、この「前家賃制」が主流です。
賃貸物件の契約時には、初期費用の中に「前家賃」が含まれます。通常は、入居する月の家賃と、翌月1か月分の家賃をあわせて支払うことになります。入居日が月の途中の場合は日割りで計算されます。
たとえば4月10日から入居する場合、4月10日〜30日分の家賃を日割り計算し、あわせて5月分の家賃を前払いします。
また、物件によっては、翌々月分までを前家賃として支払うケースもあります。前家賃が何か月分必要かは契約前に不動産会社へ確認しておきましょう。
後家賃との違い
「前家賃」に対して、「後家賃」という仕組みもあります。これは、当月分の家賃をその月の末日や翌月初旬に支払うスタイルで、かつては「後家賃制」を採用する物件もありました。
例えば4月に入居した場合、前家賃制では契約時に4月分と5月分を支払いますが、後家賃制では4月分の家賃は4月末や5月初旬に支払います。
現在では、多くの賃貸物件で「前家賃制」が採用されており、「後家賃制」を採用しているケースは少なくなっています。
前家賃を支払う理由
賃貸契約で「前家賃制」が採用されている最大の理由は、家賃滞納のリスクを軽減するためです。
入居者が住み始めたあとに家賃を滞納すると、回収が難しくなるケースがあります。入居前に家賃を前払いとすることで、トラブルを防ぐ仕組みとなっています。
借りる側としては、入居時にまとまった支払いが発生するため、費用が高く感じるかもしれません。ただし、これは今後支払う家賃を前倒しで支払っているだけなので、月々の支払いが増えるわけではありません。
実際に支払う前家賃をシミュレーションしてみる
それでは、「前家賃」を含めた初期費用がどのように変化するのかを、入居日ごとにシミュレーションしてみましょう。
家賃10万円の物件と仮定します。また、初期費用としてかかる「前家賃」は翌月1か月分とします。その他の条件は以下の通りとします。
- 家賃:10万円
- 仲介手数料:家賃の55%(税込)
- 敷金:家賃1か月分
- 礼金:家賃1か月分
なお、初期費用はほかに、「火災保険料」「鍵交換費用」「保証会社利用料」「24時間サポートサービス加入料」「消臭・除菌施工費」などがかかる場合があります。 物件や管理会社によって異なるため、契約前に不動産会社へ「初期費用の見積もり詳細」を必ず確認することが重要です。
初期費用について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください→こちら
4月1日に入居する場合
4月1日入居の場合は次のように計算されます。
- 家賃
10万円(家賃1か月分) - 礼金
10万円(家賃1か月分) - 仲介手数料
10万円 × 55% = 55,000円 - 前家賃(4月分)
10万円 - 翌月分家賃(5月分)
10万円 - その他費用(「火災保険料」など)
+α
以上を合計すると、目安金額 455,000円+αとなります。
※日割り計算の方法は管理会社や物件によって異なります。上記はあくまで目安の金額です。
4月10日に入居する場合
4月10日入居の場合、4月分の家賃は日割り計算され、翌月分(5月分)は1か月分を支払います。
- 家賃
10万円(家賃1か月分) - 礼金
10万円(家賃1か月分) - 仲介手数料
10万円 × 55% = 55,000円 - 前家賃(4月分日割り)
10万円 ÷ 30日 × 21日(4/10~4/30)= 約70,000円 - 翌月分家賃(5月分)
10万円 - その他費用(「火災保険料」など)
+α
以上を合計すると、目安金額 425,000円+αとなります。
4月1日入居の場合と比べると、4月分が日割りになるため、初期費用総額は3万円ほど安くなることがわかります。
※日割り計算の方法は管理会社や物件によって異なります。上記はあくまで目安の金額です。
4月20日に入居する場合
4月20日入居の場合も、4月分の家賃は日割り計算となり、翌月分(5月分)は1か月分を支払います。
- 家賃
10万円(家賃1か月分) - 礼金
10万円(家賃1か月分) - 仲介手数料
10万円 × 55% = 55,000円 - 前家賃(4月分日割り)
10万円 ÷ 30日 × 11日(4/20~4/30)= 約37,000円 - 翌月分家賃(5月分)
10万円 - その他費用(「火災保険料」など)
+α
以上を合計すると、目安金額 392,000円+αとなります。
4月1日入居や4月10日入居と比較すると、4月分の家賃がさらに安くなることがわかります。
※日割り計算の方法は管理会社や物件によって異なります。上記はあくまで目安の金額です。
前家賃に関するよくある疑問

退去時に、前家賃は返ってくる?
前家賃は、すでに住んだ月の家賃を前もって支払っているものなので、原則として返金されることはありません。たとえば、5月分として支払った家賃は、5月に住んだ対価として充当されるためです。
月の途中で退去する場合、その月の残り日数分が返金されるかどうかは賃貸契約書の解約条項次第です。ただし、一般的には「退去月の家賃は満額請求」とされています。
まとめ
賃貸契約時に発生する「前家賃」は、入居前に家賃を先に支払う仕組みのことです。契約のタイミングや入居日に応じて金額が変動するため、あらかじめ仕組みを理解しておくことが大切です。
一般的には、入居する月の家賃と、翌1か月分の家賃をまとめて支払い、入居日が月の途中の場合は日割りで計算されます。ただし、物件によっては、翌々月分の家賃が含まれる場合もあります。
実際に居住する期間の家賃を先払いしているだけで、二重に支払うわけではありません。「前家賃」の金額や日割りの扱いは物件や管理会社によって異なるため、契約前には詳細な見積もりを確認するようにしましょう。